【ブログ小説】タイトルは未定です。皆さんで決めてください。同性愛の話です。⑧

ブログ小説

「Aさんは学生時代友人の葛西さんから1万円盗まれたことがある。こう証言しています」

「嘘をついているのはあなたなのではないでしょうか?」

「そんなことはありません」

俺は智樹の顔を見た。

智樹が全て仕組んだことなのか。

智樹は俺が証言台に立つと聞いて先回りしたんだ。

裁判後

「葛西さん」

弁護士の向井が血相を変えて俺の前にやってきた。

「あなた私たちを騙そうとしたんですか?」

「違います。これは誤解です。私は嘘などついていません」

「ですが、友人があなたとは逆の証言をしたとなった以上あなたを信用することはできません」

「違うんです。これは冬本が仕組んだことなんです。俺をまた陥れようとしているんです。神山さんを守ろうとしているから邪魔をしようとしているんです」

「でも友人Aさんは葛西さんの味方だったんじゃないんですか?」

「それは」

東郷は俺が智樹に充と智樹の関係を言ったと勘違いしてるんだ。

だから東郷は智樹の味方をした。

いやたとえ智樹に言ってなかったとしても東郷は智樹の味方をしていたんだ。

俺はこれを予測すべきだったんだ。

智樹が裁判所から出て行くのが見えた。

でも側には充がいたから追うことができなかった。

俺はすぐに智樹に連絡をしたが返信はなかった。

弁護士の向井と神谷は帰ってしまった。

事実を証明することは難しい

どうしてこんなことになったんだ。

嘘をついているほうが事実だと信じられ、本当のことを言っているほうが嘘をついていると避けられる。

全ては智樹が仕掛けたことだ。

智樹はいつも一手先を読んでいる。

いや、もう何手も先を読まれているのかもしれない。

俺は自分の気持ちが抑えられなくなり、智樹に事実をメールした。

弁護士の向井にも本当のことを並べて送った。

こうなったら充にも会って話したかったが、どうしてもそれはできなかった。

充に嫌われたくないと思っているのか、充を刺激したくないと思っているのか。

わからなかったが、俺はどうしても充を避けてしまうんだ。

充はそもそもどうして美佳子さんと結婚したんだろうか。

東郷と俺は充は親を黙らせるために借金を抱えている美佳子さんと結婚したんだと思っている。

結婚したけど相手が借金を抱えて離婚したとなれば、人間不信を言い訳に次の結婚を逃れられると考えたんだと思うのだ。

でもそれが事実なのかはわからない。

俺が充に聞いたとしても、充は嘘をつくだろう。

今俺は美佳子さんの味方をしているのだから。

重要なのは事実だ。

事実を知り、事実を証明するすべはないのだろうか。

美佳子はなぜ充と結婚したのか

美佳子はなぜ充と結婚したのだろうか。

借金を抱えながらブランド品を購入する女性は何らかのストレスを抱えている可能性が高いそうだ。

買い物依存症で自分のストレスを報酬として得るもので埋め合わせていることが多いのだ。

美佳子さんは何か大変なストレスを抱えていたのかもしれない。

美佳子さんは家庭か何かで大きな問題を抱えていたのだろうか。

充には人を癒す特別な力がある。

充は誰からも好かれるタイプの人間だった。

愛嬌があり、憎まれない性格なのだ。

大学時代もどんなにダラダラしていても、充を憎む人はいなかったのだ。

美佳子さんは充の癒しに翻弄されたのかもしれない。

美佳子さんは本当に愛していたんだ。

もしかすると、自分の買い物グセも充と一緒にいれば治るかもしれないと思っていたのかもしれない。

充は本当に智樹を愛しているのか?


しかし俺が疑問に思っているのはもう一つある。

充は本当に智樹を愛しているのだろうか。

充は智樹を愛しているというわけではなく、智樹の財産を目当てにしているだけなのではないだろうか。

智樹と一緒にいれば金銭的に不自由することはない。

そう考えて智樹のいうことを聞いているというのはないのだろうか。

充は本当に幸せなのだろうか。

智樹の言いなりになっているのだけなのではないだろうか。

智樹の勝ち

考えてみると、一番得をしているのは智樹なんだ。

好きな人と一緒にいることができ、金もたくさん得ることができるのだ。

それでも自分勝手なことをしているのはどうしても許せなかった。

しばらくして裁判が終わってしまったことを知らされた。

充の言い分が通り、美佳子さんと充は離婚することになったのだ。

俺は美佳子さんに電話し、上訴することを勧めたが聞き入れてくれなかった。

これで智樹と充の計画は予定通りに進んだのだ。

智樹はこれからも相手を蹴落としのし上がって行くのだろう。

自分の計画のために、必要があれば嘘をつく。

そうやって這い上がって行くのかもしれない。

智樹の叔父はおそらくそうやってのし上がってきたのではないだろうか。

フェアに生きることなんてできないのだろうか。

フェアに生きれば損をするのだろうか。

俺はそんなことを悔しがりながら歩いていた。

俺は何がしたかったんだろうか。

ルドラと別れて1人になって、それでも東郷から認められた信頼も壊してしまい、他人の人生をぐちゃぐちゃにしようとして、こんなんだから大学でハブられたんじゃないのか。

自分のせいだったのかもしれない。

智樹に嘘を拡散されなくてもいずれこういうことになっていたのかもしれない。

俺はすぐに暴走してしまう、そういうやばいやつなんだ。

もう辞めよう、こういうことはもう辞めるんだ。

自分の人生と向き合おう。

誰に干渉するでもなく、ただ自分の人生と向き合おうと思った。

結局他人のことなどどうこうできないのだ。

自分の人生は自分で決める。

みんなそうなんだ。

だから智樹が邪魔な人を追いやって、自分だけ良い思いをしてたとしてもそんなことはどうでもいいんだ。

充が自分に嘘をついて、智樹と一緒にいることも。

美佳子さんが智樹と充に騙されていようが、どうでも良いんだ。

俺はどうこうするべきでもない。

俺は頼まれたわけでもないんだから。

俺はどうすべきなんだ。

俺はルドラと一緒にいたいんだ。

また一緒に暮らしたいと思っているんだ。

ただそれだけなんだ。

でも今はルドラにとって、ルドラがしたいようにさせてあげることが一番良いということもわかっている。

俺は俺の人生を生きよう。

仕事をして、帰ってきてピーちゃんと遊んで、寝て、また仕事へ行って。

ただただそれだけ。

以前からやりたかったことをしてもいい。

俺は俺がやりたかったことを自分のためにやればいいんだ。

枯れ葉が舞う秋の日のことだった。

俺はもう1人を生きていくんだ。

幸せだった人生をなくして、俺は人生を邁進した。

離人症

しばらくして仕事でトラブルが起きた。

同じ派遣の立場の女性が急に辞めることになった。

それに職場の人との意見が食い違い、俺も辞めたいと思うようになった。

その頃、俺は自分のためにお金を使いすぎたのもあり、金欠状態だった。

それなのに仕事でトラブルを抱え眠れない日が3日間続いた。

疲れているのに休めない。

そんな時に起きたのが、離人症という症状だった。

自分が本当に生きているのかどうかわからなくなるような感覚に襲われた。

自分は現実を生きているのに、本当は夢を見ているような感覚がしたのだ。

遠くから見ている自分。

周りの人は自分に話しかけているんじゃない。

自分の声も周りに届かないんじゃないか。

そういう曖昧な世界にいる感覚で過ごしていた。

この世界のルールもわからなくなり、俺は車に衝突した。

離人症とはうつ病の人がかかる症状のようだ。

誰に相談すれば良いかわからなかった。

自分が本当に現実にいるのかどうかがわからなかったからだ。

自分の判断が正しいのかもわからなかった。