「コントが始まる」を観終えた感想〜夢を諦めることが正しいことではない〜

「コントが始まる」というドラマが終わりました。

2021年コロナ禍で始まったドラマです。

菅田将暉さん、仲野太賀さん、神木隆之介さん、有村架純さんという錚々たるメンバーが揃った奇跡的なドラマで描かれた芸人という夢をあきらめる方になった人たちの姿です。

このドラマで描かれていることが夢を追う多くの人の現実だからそれが最もリアルに描かれたんだと思います。

でも最後のシーンはなんの夢物語でもありませんでした。

とても味気ないものだと私は感じました。

だから文字にしてそのことを残しておきたいと思います。

「コントが始まる」感想、夢を追うということは本当に難しいのか?

菅田将暉さん、仲野太賀さん、神木隆之介さんの3人が演じるコント芸人は恩師の真壁先生に解散すべきかどうか相談した際、やめた方がいいと言われます。

30代から先の夢を追うという行為は想像を絶する辛さがあると言うんです。

私はこれを聞いてとても胸が痛みました。

真壁先生は夢を追うことができなかった人間です。

だからこういうことをおっしゃられたんだと思います。

でも実際、30代になっても芽が出ず全然ダメなら諦めた方が良いと思うのも真っ当といえば真っ当です。

けれど私は少しこれに対して違和感を感じました。

春斗と潤平が相談した相手が真壁先生ではなく、芸人としてあるいは夢を追いかけて成功した人だったとしたら、彼らの人生はどのように変わっていたんでしょうか。

もしも晩年で成功した木下ほうかさん、吉田鋼太郎さん、橋本じゅんさんだったらなんと言ったんでしょうか。

もっと言えば2人が相談した相手があのカーネルサンダース(60代まで失敗続きの人生)だったとしたら?

春斗は別に才能がないわけではありません。

潤平だって面白くないわけではありません。

瞬太に限っては一度プロゲーマーとして成功しています。

30歳を区切りに考える風潮。

周りの大人も早く夢を諦めろという空気。

そんなものが彼らの才能を殺したんだとしたら、とてももったいないと思います。

実際サンドウィッチマンは30代でブレイクし、錦鯉は40代後半でブレイク、トレンディエンジェルも遅咲きです。

10年続けてダメなら諦めるなんて考え自体が誰が決め、どうして真っ当だと言われているんでしょうか。

そんな根拠のない考えで夢をあきらめるのは良くないと思いました。

そんなことより、どうして客が増えないのか分析したり、ネタを誰かに書いてもらったり、もっと面白いネタがかけるよう努力したり、切磋琢磨することの方が重要ではないかと思います。

というかここからが面白いところなんじゃないかと思います。

春斗は最後、水のトラブルを解決する業者に転職します。

瞬太は冒険に出たようです。

潤平は彼女のために実家の酒屋を継ぐことにしました。

彼らは果たして本当に今後の人生を幸せに暮らすことができるんでしょうか。

もちろん彼らの選択です。

彼らが納得して進んだのだとすればそれはとても素敵なことでしょう。

しかし夢というものは叶えることが目的ではなく、夢を追うという行為自体に意味があるんです。

夢を追うことが人生を生き生きとさせます。

実際彼らは夢を諦める決意をした際、さまざまな問題を抱えました。

そして最後の春斗の顔にはどこか微妙な表情が見えたんです。

春斗は本当に歩みたかった道を進めているんでしょうか。

とても疑問に思います。

私は彼らの周りの人間の中に1人でも夢を実現できた人がいたら、彼らの人生も変わっていたのではないかと思いました。

「コントが始まる」感想、周りの人の影響で人生は大きく変わる

日本人、いや世界の中の大抵の人が夢を諦めた人たちです。

彼らが束になって経済を回しているんです。

年収1,000万円以下の人たちはどこかで何かを諦めた人たちかも知れません。

彼らは夢を追う人をそちらに引き込もうとします。

しかし残りの数%の夢を実現できた人はそんなことをしません。

でもその人たちは非常に少ないんです。

だからこそ彼らは特別な才能があったんだと言い訳をする人がいるんです。

もちろん宇多田ヒカルさん、木村拓哉さんのようにその中には天才的な容姿や才能を持っている人もいるでしょう。

しかし今活躍している有名な人の誰もが天才だというとそうではありません。

菅田将暉さんは天才なんでしょうか。

木下ほうかさんは天才なんでしょうか。

山崎賢人さんは天才なんでしょうか。

菅田将暉さんだって演技力がなければどこにでもいるイケメンと同じだったんではないでしょうか。

菅田将暉さんは歌が特別うまいんでしょうか。

そんなことはありません。

彼が持っていたのは努力する才能と自信を持てる才能です。

ではその才能はどこから生まれたんでしょうか。

菅田将暉さんの周りにいる人が芸能人や俳優を否定する人ばかりだったとしたら彼は、日本アカデミー賞をとることができたんでしょうか。

彼が相談した相手が真壁先生だったら彼の成功はあったんでしょうか。

私はだからこそ、「コントが始まる」の最後が残念に思います。

しかし金子茂樹さんはそれをわかってあえて書いたのではないでしょうか。

それが今の現実なんだと皮肉ったんではないでしょうか。

こんな現実だけど、成功する人がいる。

つまりこんな現実だからこそ、成功できない人が増えているんだ。

そう言いたかったのではないでしょうか。

春斗の家族はとても味気ない考え方をしています。

春斗が夢を諦めた時、就職できるのか心配していました。

だから母親は旦那にツテがないか確認していました。

そんなツテを探すより、諦めたりせず自分の好きな道を歩みなさいと言えなかった現実があるんです。

30代でもアルバイト、40代でもアルバイト。

確かにそんなことをしていたら、人生終わっています。

YouTubeがあるんだからYouTuberを目指せばいいのではないか。

そんなことを言っても、もはやYouTuberも非常に狭き門です。

だからこそ、夢を追うことが恥ずかしい今だからこそ、人々が胸を貼って夢を終える環境を作ることが重要ではないかと私は思いました。

アルバイトなどせず、真剣にネタを作れる世の中。

頑張っている誰かに、投げゼニできる世の中。

人を笑わせたらお金がもらえる世の中。

そんな新しい稼ぎ方ができる世の中が必要なのかも知れません。

そして夢を諦めないかっこよさを応援できる大人が増える風潮。

しかしそんなものは今はまだありません。

だとしたら彼らにも必要だったものがあったのではないかと私は思います。

「コントが始まる」感想、マクベスの3人はどうしたら続けられたのか?

私は一番最後ラーメンを食べた後、春斗は2人をもう一度口説くのではないかと期待していました。

でも春斗から出た言葉は、ラーメンの味の感想でした。

私は春斗だけは1人でも芸人を目指して欲しかったです。

彼にその覚悟がなかったことが残念です。

春斗だけでも諦めずに芸人を目指せていたら、やがて潤平や瞬太も合流したかも知れません。

いずれにせよ、彼らは諦めてしまいました。

でもあの時必要だったのは、誰の考えにも流されない強い意志と、自分の才能への自信だったんではないでしょうか。

どうして菅田将暉さんは、歌手としても活躍できているんでしょうか。

彼は歌が上手いんでしょうか。

うまいけれど、そんな特別上手いわけではありません。

それだったら、上手い人はいくらでもいます。

それでも菅田将暉さんが音楽活動を続けていられるのは、彼の中には自信があるからではないんでしょうか。

そしてそれ以上に歌を歌いたいという意思があるんだと思います。

彼は誰からなんと言われようと自分の歌声に自信を持っているからこそ、続けていられるんじゃないかと思います。

マクベスを辞めた春斗にはその自信が足りなかったのではないかと思います。

でも10年前は絶対に芸人になれると自信を持っていたはずです。

でも10年やって芽が出ず諦めてしまったんです。

こんな格好の悪いことはありません。

そこで悔しいと思えるかどうか。

まだ自分を信じられるかどうか。

それがとても重要なんです。

もしも本当に芸人になりたいと思うのであれば、もっと頭を鍛えて面白さを研究するはずです。

彼らにはそれができなかった。

ただただ悔しく思います。

そして「コントが始まる」を観て、やっぱり夢なんて追わない方がいいなと思う人と、そして俺ならできると思う人が現れることを願っています。