「グランドメゾン東京」は最高のドラマ「ニッポンノワール」との比較

ドラマ

「グランドメゾン東京」が始まりましたが、「グランドメゾン東京」が他のドラマとは比べ物にならない別格の仕上がりだということがわかりましたので書いておきます。

「グランドメゾン東京」はかなりレベルの高いドラマだと思います。

そのレベル的には、「義母と娘のブルース」をも抜きうるんじゃないかと思います。

「アンナチュラル」と同レベルの優れたドラマになるのではないでしょうか。

後半に「ニッポンノワール」と比較することにします。

「グランドメゾン東京」のすごいところ

「グランドメゾン東京」ですごいところはいくつもあります。

まずドラマで重要なことは、ドラマを見続けさせることです。

ドラマを見続けさせるには、視聴者へ疑問を植え付けなければなりません。

木村拓哉の特異性を理解している

「グランドメゾン東京」のすごいところは、木村拓哉をうまく使用しているところです。

ドラマでは普通、疑問を植えつける際に人を殺したり、登場人物を危険に晒したりするんですが、木村拓哉だけはそれをあまり必要としない役者です。

なぜか木村拓哉さんはそこにいるだけで見れるんですね。

キムタクは次に何を言うのか、「きっとかっこいいことを言うかもしれない」

どんな行動を取るんだろうと期待しながら見れるんです。

「グランドメゾン東京」はキムタクのそういう特異性をよく理解し作られていると思います。

そしてそれは沢村一樹さんにおいても同じです。

「グランドメゾン東京」は何も起きない序盤で、音楽と調理、カメラワーク、役者の動きで簡単に視聴者を引き込むことができました。

もちろんフランス語を使用する俳優陣が珍しいと言うのもありましたが、それ以上に2人の役者の演技が際立っていたのです。

やはり沢村一樹と木村拓哉はある意味、疑問を植え付けなくても見れる俳優なのかもしれません。

木村拓哉をどういう状況に持ち込めばいいかわかっている

今回の木村拓哉さんの役所は、「騙された超一流シェフが仲間を集めて三つ星レストランを築き上げる」という感じです。

筋書きとして、木村拓哉さんは一度どん底に落とされます。

しかし木村拓哉さんお馴染みのどんな時でも楽しむスタイルを活かして、それを乗り越えていくのです。

「何をやっても木村拓哉」これは悪い意味で使われる言葉かもしれませんが、「どんな時でも木村拓哉」でいてくれる素晴らしさだってあるのです。

木村拓哉はどんな時でも諦めないのです。

「グランドメゾン東京」は木村拓哉さんを窮地に立たせることで、「キムタクは次はどうするんだ」をきちんと描けているんではないでしょうか

つまり「グランドメゾン東京」は、キムタクをきちんと追い込み、復活を預言させているんです。

それがこのドラマの最大の見る動機となっているのではないでしょうか。

鈴木京香が頼りない

「グランドメゾン東京」にはフランスや高級感がよく似合う鈴木京香さんが重要な人物を演じています。

鈴木京香さんは「王様のレストラン」でもレストラン系ドラマを演じていますが、今回も少しだけキャラが似ているように思います。

鈴木京香さんは最近ではドラマ常連というわけではなく、パッとしない活躍でした。

でもこのドラマでやっぱり鈴木京香さんは日本のドラマで必要なんだなと誰もが思うようになるのではないでしょうか。

鈴木京香さんは基本的に弱くてドジだけど芯がちゃんとしてる良い人を演じると、絶妙に良い味を出すとわかっています。

製作陣はそのことをきちんと理解し、鈴木さんにこの役を割り当てたのではないでしょうか。

この弱々しいけど信頼できるパートナーを木村拓哉という何かしでかすヒーローに添えることで、物語を一気に面白くさせたのではないでしょうか。

誰が尾花夏樹(木村拓哉)をはめたのか?

このドラマの最大の見所は、いかにして木村拓哉率いる最高のチームが三つ星レストランを気づいていくのかということです。

しかしそこには切っても切れない要素がもう一つあります。

それは尾花夏樹をはめたのは誰なのかというところです。

尾花夏樹はパリ時代「エスコフィユ」というレストランで二つ星を獲得しましたが、日仏首脳会談の昼食会でピーナッツアレルギーの出席者へピーナッツを提供したことでテロと疑われ、クビになっています。

視聴者は尾花はそんなすることないと思っていますが、どうなのでしょうか。

尾花が自分で入れたわけではないとすれば、沢村一樹や尾上菊之助(丹後学)が入れたということになります。

この疑問が視聴者の見る動機と考察熱を呼び起こしていくのではないでしょうか。

どうして「グランドメゾン東京」は見れるのか?

私たちはどうしてドラマを見てしまうのでしょうか。

私たちはどうしてドラマを見ないのでしょうか。

面白いドラマとはなんなのか。

「グランドメゾン東京」は音楽と映像の秀逸性、さらに希望が満ち溢れているように思います。

「グランドメゾン東京」にはどのドラマよりも希望が溢れているのではないでしょうか。

それは音楽からも映像からも見られると思います。

しかし何よりも木村拓哉が放つ言葉に希望が溢れていると思うのです。

鈴木京香演じる早見倫子が三つ星レストランを追う夢を諦めようとしていた時、尾花夏樹は「もったいない」と言います。

誰もが諦めるような状況。

尾花夏樹に才能を見せつけられ敵わないと思い、身を退けようとした時、尾花夏樹は「もったいない」と言ってくれました。

さらに尾花夏樹は、京野さん(沢村一樹)が戻ってきてくれた際、彼らが作るレストラン「グランメゾン東京」の料理長は早見倫子だとも言っています。

尾花は早見が星を取ることを諦めていなかったのです。

自身が諦めてしまうような状況でさえ、尾花は諦めませんでした。

そんな尾花の一言一言が、希望に満ち溢れているのです。

見ているものはこんな希望に満ちた言葉を聞き、ワクワクしドキドキするのです。

そうして尾花夏樹という人物をもっと知りたくなるのではないでしょうか。

木村拓哉は尾花夏樹にはまっている

尾花夏樹はパリの「エスコフィユ」で事件を起こしてしまった際、客に暴力を振るっていますが、その理由は部下を侮辱されたからです。

尾花がなぜ客に暴力を振るったかは誰も知らないという設定ですが、これが事実であれば尾花は人のために自分を犠牲にしたことになるのです。

こういう性格は木村拓哉という本当の姿を想像させることにも繋がります。

木村拓哉さんはSMAP分裂の渦中、大晦日での集会に参加しませんでした。

中居正広さんと一緒にジャニーズ事務所に残ることを選び、裏切り者だと批判されることもありました。

木村さんは裏事情を知ったあらゆるメディアから批判されることもあります。

しかし木村拓哉さんという人は、周りから批判されているが本当はとても純粋で正義感の強い人なのではないかと考えてしまうのです。

木村拓哉のファンは、この尾花夏樹という人物に本当の木村拓哉を重ねることができるのではないでしょうか。

【まとめ】「グランドメゾン東京」のすごいところ

「グランメゾン東京」は筋の順番も絶妙で見る人を引き寄せる仕掛けもきちんと行なっています。

さらに尾花夏樹や早見倫子、京野さんなどの心情にきちんと感情移入させられるようなキャラ作りを行なっています。

これはまさにドラマの中の最高峰と言っていいレベルだと思います。

ではここからは「ニッポンノワール」という低レベルのドラマと比較したいと思います。

「グランメゾン東京」と「ニッポンノワール」の違い

まず「ニッポンノワール」の脚本の構成としては、現実を進めながら過去を紐解く手法となっています。

「ニッポンノワール」の出だしでは、広末涼子演じる碓氷薫が主人公の清春(賀来賢人)の横で死亡している場面から始まります。

清春は自分で3ヶ月間の記憶を失っていると言っているため、清春が碓氷を殺したのかわからない状況です。

その状況で清春は正直にことを打ち明けるのではなく、隠蔽工作を始めます。

いろんな疑問があり、ドラマとしては「なんだなんだ、どういうことなんだ」と一見引き込まれてしまいそうですが、このドラマは「グランメゾン東京」とは大きく違います。

「グランメゾン東京」は現実から未来に向けて走らせていくドラマになっています。

もちろん3年前に誰が料理にピーナッツを混入させたのかを考察する際に回想しますが、それはごく一部の場面のみです。

視聴者は始めから脚本家と同じ情報量を与えられるわけです。

しかし「ニッポンノワール」は記憶喪失となっている清春や他の登場人物が知っていることと、視聴者が知っていることに乖離があります。

さらには脚本家武藤将吾の前作「3年A組」のベルムズの情報も知る必要があります。

繋がっていてもいいのですが、「ニッポンノワール」は明らかに「3年A組」を見ていなければわからないことが多すぎるのです。

あるいは「3年A組」を知っていてもわからないことが多すぎます。

考察とはわかりそうでわからないのが面白いのですね。

数学の問題で一切わからないような問題など誰も解きたいと思いません。

同じように、情報が少なすぎて考えることができなくなると、視聴者は考察すらできなくなり、ついていけなくなるのです。

そして「ニッポンノワール」はドラマとして最も致命的なミスを犯しています。

「グランメゾン東京」と「ニッポンノワール」の違い「ニッポンノワール」の致命的ミス

それは、キャラクターに感情移入できないことです。

「ニッポンノワール」は主人公である清春が悪い人なのか、良い人なのか全くわからない状況を作り出しています。

清春は3ヶ月間の記憶を無くしているので、犯人なのか犯人ではないのかわからないのです。

となるともしかすると清春は碓氷班長を殺すような悪いやつなのかもしれないんです。

普通ドラマは主人公が絶対的に良い人で、共感できるから見れるものですが、主人公が良い人か悪い人変わらない状況では感情移入ができなくなるんですね。

それによって、視聴者は「???」と感じながら見続けることになります。

「あなたの番です」がブームとなり、考察ドラマが社会現象になった今、考察を誘発するのは戦略として間違えていませんが、「ニッポンノワール」は情報が少なすぎるが故に、大変難しいドラマになっているのです。

そして誰に感情移入すれば良いかわからない残念なドラマになっているのです。

この点を考え、「グランメゾン東京」と「ニッポンノワール」のドラマとしての質の差異を紹介しました。

良いドラマを見たい!

これからも「グランメゾン東京」のような素晴らしいドラマが生まれることを願っています。